ユーイング肉腫ファミリー腫瘍
(Ewing's sarcoma family of tumors:以下ESFTと略します。)
ESFTとはどんな病気ですか?
ESFTは、骨、もしくは皮膚・筋肉・結合組織といった軟部組織と呼ばれる体の部位にできるがんです。手足や骨盤にできることが多いですが、そのほかに肋骨・背骨(椎体)・肩胛骨・頭の骨(頭蓋骨)にもできます。がんができる場所によっては、『Ewing肉腫』、『PNET(primitive neuro ectodermal tumors)』、『Askin腫瘍』といった呼ばれ方をします。
主に10歳代の思春期のお子様がかかりますが、10歳以下のお子様や20歳代の若い成人にできることもあります。
ESFTになるとどのような症状がでますか?
親はどうやって気づけばよいですか?
ESFTが骨の中にできると、骨の痛みが出たり周囲が腫れたりします。一方、軟部組織にできた場合は痛みが無いこともあり、がんがある程度大きくならないと外見からも分かりにくいので、診断が遅れることがあります。
どのように診断するのですか?
画像検査
骨や軟部組織にできる病気は、ESFT以外にも感染症、骨髄炎、骨肉腫、横紋筋肉腫など、いろいろなものがあります。そのため、まずレントゲン検査、CT(コンピューター断層診断)検査、MRI(核磁気共鳴画像診断)検査、骨シンチといった画像の検査を行い、どの病気が疑わしいのか判断します。ESFTが疑わしい場合は、それがどれぐらいの大きさか、周囲のどこまで広がっているか、体の他の場所にも散らばっていないか(転移)を調べます。
手術による生検
前述の画像検査では、ESFTが疑わしいと分かっても、本当にESFTかどうか正確にはわかりません。そのため、手術でがんの一部を取ってきて、顕微鏡で見て調べる必要があります。
キメラ遺伝子検査
キメラ遺伝子とは、がんの中に含まれる特殊な遺伝子です。キメラ遺伝子には多くのタイプがありますが、がんの種類によってそのタイプが決まっています。生検で取ってきたがんの一部を使って遺伝子の検査を行い、EWS-FLI1、EWS-ERG、EWS-ETV1、EWS-FEVというタイプのキメラ遺伝子が見つかれば、ESFTと診断がつきます。ただし、キメラ遺伝子のないESFTもあるので注意が必要です。
どのようにして治療するのですか?
手術、抗がん剤、放射線治療を組み合わせて行います。抗がん剤としては、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、イフォスファミド、アクチノマイシン、エトポシドの6剤が主に使用されます。まず抗がん剤を投与してがんをできるだけ小さくします。次に手術でがんをすべて取り除きます。手術の後、さらに化学療法を行います。がんのあった場所に放射線をあてることもあります。
最初の抗がん剤治療でがんが小さくならず手術ができない場合は、さらに放射線をあててがんを小さくするよう試みます。
診断時に転移があった場合は、抗がん剤を増やしたりするなど様々な治療方法が行われていますが、なかなか良い治療法が見つかっていないのが現状です。
ESFTは治る病気ですか?
- 体のどの場所にできているか
- 何歳で病気になったか
- 腫瘍の大きさがどれぐらいか
- 病気がわかったときに転移があるかどうか
治療の副作用はあるのでしょうか?
副作用には、手術の副作用と抗がん剤の副作用があります。手術では骨や体の一部を切除します。そのため、体や手足を動かす機能が損なわれることがあります。しかし、リハビリを行うことで、一旦損なわれた機能を回復させることは十分可能です。
抗がん剤の副作用は、気分が悪くなってご飯が食べられなくなったり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったりと、体に強い負担をかけるものがあります。治療中のこのような副作用をできるだけ軽減して、本人が元気な状態で闘病できるように、様々な支持療法を行います。また、抗がん剤を使い終わった後に、腎臓や心臓の働きが悪くなったり、高い音が聞こえにくくなったりすることがあります。そのため病気が治った後も定期的に病院に通院して、検査を受けることが必要です。