急性骨髄性白血病
急性骨髄性白血病とは?
急性骨髄性白血病(AML)は、血液をつくる骨髄にできる「血液のがん」の一つです。
正常な骨髄では、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞が日々つくられていますが、AMLではその元になる「骨髄芽球(こつずいがきゅう)」という細胞が異常に増えてしまい、正常な血液細胞がつくれなくなってしまいます。
この結果、体の中の大切な働きがうまくできなくなり、さまざまな症状が出てきます。
どんな症状がありますか?
AMLの症状は、正常な血液のはたらきができなくなることによって起こります。お子さんに下記の様な変化が見られた場合、注意が必要です:
- 顔色が悪い(貧血)
- 熱が続く、風邪が治りにくい(感染症)
- あざができやすい、鼻血がよく出る(出血傾向)
- 疲れやすい、元気がない
- 骨を痛がる(特に脚や背中)
- リンパ節が腫れている
- お腹が張っている(肝臓や脾臓の腫れ)
これらの症状がすべて出るわけではありませんが、いつもと違う様子があれば早めの受診が大切です。
どうやって診断しますか?
1. 血液検査
白血病では、血液中に異常な白血球が増えて、赤血球や血小板が減ることがあります。
2. 骨髄検査
骨盤の骨(腸骨)に針を刺して、骨髄の細胞を調べる検査です。ここで異常な細胞(白血病細胞)の数や性質を確認します。白血病細胞の表面にあるマーカーを調べることで、白血病細胞の種類を特定することができます。
3. 遺伝子・染色体検査
白血病細胞の中には、特定の遺伝子の異常や染色体の変化が見られることがあります。これらは病気の種類や治療への反応、予後(治りやすさ)を予測する手がかりになります。
4. その他の検査
体の他の場所に病気が広がっていないかを調べるために、CTやMRIなどの画像検査、や髄液検査(脳や脊髄への白血病の広がりを調べる)を行います。
急性骨髄性白血病の種類は?
AMLは、血液の中でどの細胞ががんになったかによって分類されます。従来のFAB分類(M0〜M7)に加え、現在ではWHO分類という、より詳しい分類も用いられています。
分類は、以下の情報をもとに行います:
- 骨髄の細胞の形(顕微鏡検査)
- 細胞の表面マーカー(フローサイトメトリー)
- 遺伝子異常や染色体の異常(分子検査)
この分類により、治療の強さや移植の必要性などを決める目安になります。
治療について
急性骨髄性白血病の治療は、以下の2段階に分かれます。
1. 寛解導入療法
まずは強力な抗がん剤を使って、白血病細胞を大きく減らすことを目指します。これにより「寛解(かんかい)」という、見た目ではがんが見つからない状態を目指します。
2. 寛解導入後治療(強化療法や、造血幹細胞移植)
寛解が得られても、体の中には目に見えないレベルで白血病細胞が残っています。これらを完全に消すために、さらに治療を続けます。
- 低・中間リスクのお子さん:化学療法を数クール行い、経過を見ます。
- 高リスクのお子さん:再発のリスクが高いため、造血幹細胞移植(骨髄移植)が検討されます。
いずれも治療期間は半年ほどかかり、その間は入院して治療を受けることが一般的です。
治療の効果と予後
治療法の進歩により、小児AMLの治療成績は大きく改善しています。
- 全生存率:約75%
- 無イベント生存率(再発・合併症なしの生存):約60%
また、次のような要素が治りやすさ(予後)に影響すると考えられています:
良い予後の例
- RUNX1::RUNX1T1遺伝子異常(8番染色体と21番染色体の転座)
- 初発で治療に良く反応している
注意が必要な例
- 7番染色体のモノソミー(1本しかない)や、5番染色体の異常
- FLT3-ITDの存在
- 特定の融合遺伝子(BCR::ABL1、FUS::ERGなど)
- 初期治療に反応が悪い
治療中・治療後の注意点
治療中の副作用:
- 感染症(免疫が下がるため)
- 吐き気、食欲不振
- 脱毛
- 出血しやすくなる など
治療後の「晩期合併症」(特に移植を行った場合):
- 心臓や神経の障害
- 成長の遅れ、思春期の異常
- 不妊症のリスク
- 二次がん(別のがんが発生する可能性)
長期フォローアップについて
治療が終わってからも、定期的な通院(外来フォローアップ)がとても大切です。
当院では、お子さんの成長や心身の発達、学校生活や社会復帰などを見守りながら、以下のようなサポートを行っています:
- 晩期合併症の早期発見・対処
- 復学・就学支援
- 心理的サポート
- 就労や結婚・出産に向けた支援
臨床研究について
当院は、日本小児がん研究グループ(JCCG)や日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)などの全国規模の研究ネットワークに参加し、最新の標準治療・臨床試験に基づいた治療を提供しています。
最後に
急性骨髄性白血病は強い治療が必要な病気ですが、適切な治療を受けることで、多くのお子さんが回復し、元気に成長されています。
お子さんとご家族が不安な気持ちを抱えるのは当然です。当院のチームは、医師・看護師・薬剤師・心理士・ソーシャルワーカーが連携して、治療から退院後の生活までしっかりとサポートします。