髄芽腫

髄芽腫とはどんな病気ですか?

子どもの脳にもがんができることがあります。髄芽腫はその5分の1を占める代表的ながんです。髄芽腫ができるのは、脳の中でも頭の後ろ側で下の方にある、小脳という場所です。日本では、毎年100人弱がこの病気になると考えられています。10歳以下の子どもにできることが多いです。特に5-7歳の子どもに多く、3歳以下の子どもにできることもあります。

髄芽腫になるとどのような症状がでますか?
親はどうやって気づけばよいですか?

髄芽腫が頭の中にできると、脳の中の水(髄液)の流れが遮られ、頭の中の圧力(脳圧)が高くなります。そのため、頭が痛くなったり、何度も吐いたりします。さらに症状が進むと、意識状態が悪くなります。また、小さな子供の場合は頭が軟らかいため、頭の中の圧力によって頭が大きくなってきます。最初は胃腸かぜと区別することが大変難しく、胃腸かぜの治療をされることが多いです。しかし、お薬や点滴でも吐くのが治らないときは注意が必要です。小脳に髄芽腫ができた場合は、ふらつき、座れない、おもちゃや物が上手くつかめないなどの症状(小脳失調)がでることがあります。また、眼振という、目の玉の小刻みな動きがみられることがあります。

どのように診断するのですか?

画像検査

上記の症状が続く場合、CT(コンピュータ断層診断)検査、MRI(核磁気共鳴画像診断)検査で、頭の中の状態を調べます。髄芽腫が疑わしい場合は、体の他の場所にも散らばっていないか(転移)、他の場所にもCT検査、MRI検査、骨シンチを行います。

髄液検査

髄液は頭から首を通って背骨の中にも流れています。背中から針を刺してこの髄液を採取します。この髄液の中にがん細胞が混じっていないかどうかを調べます。

手術による生検

小脳にできるがんには、髄芽腫の他にも上衣腫などがあります。これらは、画像検査だけでは正確に区別することができません。そのため、がんを手術で取ってきたときに、その一部を顕微鏡で見て調べる必要があります。顕微鏡で見て初めて、髄芽腫であることが確定します。

どのようにして治療するのですか?

髄芽腫の治療は、手術・放射線治療・化学療法を組み合わせる集学的治療が基本です。

まず、脳にできた腫瘍をできるだけ安全に摘出する手術を行い、脳圧の改善と診断確定を行います。

従来は、年齢・残存腫瘍量・髄液播種の有無で標準リスク/高リスクに分類していました。近年は、分子生物学的サブタイプ(WNT、SHH、Group 3、Group 4)が治療方針決定に重要であることが明らかになっています。

WNT群
治療成績が非常に良好で、放射線量の減量が国際的に検討されています。
SHH群
乳幼児例では化学療法中心、思春期以降では標準治療。
Group 3
転移を伴うことが多く、強化療法が必要。
Group 4
中間的リスク、標準治療が基本。

日本国内でも、分子サブタイプを踏まえた治療選択が徐々に導入されつつあります。

放射線治療

主に3歳以上のお子さんでは、手術後に脳脊髄照射(craniospinal irradiation:CSI)を行います。

現在は、強度変調放射線治療(IMRT)や陽子線治療が普及し、正常組織への影響を抑えながら治療できるようになっています。

標準リスク群
CSI 23.4 Gy → 局所ブースト
高リスク群
CSI 36 Gy → 局所ブースト(国際標準)

放射線治療の晩期障害(発達・内分泌・聴力など)を減らすため、陽子線治療の適応拡大が進んでいます。

化学療法

現在の国際的な標準治療では、手術と放射線治療に加えて、複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法を行います。

主にビンクリスチン・シスプラチン・シクロホスファミドが用いられます。

標準リスク群
脳脊髄照射(CSI)後に多剤併用化学療法を行います。
高リスク群
放射線量の調整や化学療法の強化が行われます。

これらの治療は、小児科・脳外科・放射線科など複数の専門家が協力し、お子さんの年齢・病状・リスク分類に応じて最適な治療法を検討して進めています。

髄芽腫は治る病気ですか?

治療の進歩により、治る可能性は以前より高くなってきました。

さらに、顕微鏡で見たがんの形によって、治りやすいタイプと治りにくいタイプがあることも分かってきました。

治療の副作用はあるのでしょうか?

副作用には、手術の副作用、放射線の副作用、抗がん剤の副作用があります。

手術による副作用で特徴的なのは、小脳性無言症です。これは、手術の後から数十日間、言葉を話さなくなるという副作用です。原因は明らかではありません。

放射線の副作用は、治療後に発達が遅れることと、体の成長や維持に必要な脳からのホルモンの分泌が低くなってしまうことです。特に発達の遅れは年齢が低いほどその影響が大きいため、年齢の低いお子様に放射線治療を行う際は、どれくらいの量の放射線を用いるか、慎重に検討することが必要です。低身長やホルモン欠乏については、生涯にわたりホルモンの補充を必要とする場合があります。

抗がん剤の副作用は、気分が悪くなってご飯が食べられなくなったり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったりと、体に強い負担をかけるものがあります。治療中のこのような副作用をできるだけ軽減して、本人が元気な状態で闘病できるように、様々な支持療法を行います。また、抗がん剤を使い終わった後に、腎臓や心臓の働きが悪くなったり、高い音が聞こえにくくなったりすることがあります。さらに、抗がん剤の影響で新たながんを発症する可能性もあります。そのため病気が治った後も、定期的に病院で検査を行うことが必要です。