小児がんに対する造血細胞移植について

当院の造血細胞移植体制について

当院の小児医療センターには、4つの移植病室(クラス100とよばれる無菌室2床と、クラス10000とよばれる準無菌個室2床)が設置されています。小児の血液専門医・造血細胞移植認定医を中心とした移植担当チームが、血液疾患の治療のため同種造血細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)を行っています。また、固形腫瘍の治療のため自家造血細胞移植を行っています。

移植を行う際には、小児科・疼痛緩和ケア科・歯科など多数科の医師、看護師、薬剤師、栄養士、保育士などの多職種の医療スタッフが集まってカンファレンスを開き、治療方針を検討・共有しています。治療成績だけでなくお子さんたちに優しい生活の質(QOL)の向上にも配慮した、集学的な治療を目指しています。

同種造血細胞移植と自家造血細胞移植とは?

「同種造血細胞移植」とは、患者さんの障害された造血細胞を、健康な人(ドナー)の造血細胞に置き換える治療法です。一方、患者さん自身の造血細胞を移植する治療法を「自家造血細胞移植」といい、固形腫瘍などの疾患で造血細胞自体には障害がないと考えられる場合に行われます。

どのような病気が造血細胞移植の適応になるの?

移植の対象となる疾患は、悪性疾患だけではなく、良性疾患までさまざまです。同じ「造血細胞移植」といっても、対象となる疾患により、その目的や方法が異なります。

①悪性疾患:白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫など

がん細胞を体内から完全に根絶することが移植の目的となります。このため、同種造血細胞移植では、化学療法や放射線照射を組み合わせた前処置を行い、がん細胞の数をなるべく減らすとともに、移植したドナー由来の細胞が生着できるように骨髄中のスペースを作ります。移植したドナー由来の細胞は、がん細胞を攻撃することにより根絶するとともに、新たな造血・免疫能を担います。

近年は、強度を減弱した前処置も行われるようになってきていますが、移植までの治療歴や患者さんの状態、病気の状態(体内のがん細胞の量)などにより前処置の選択が変わってきます。

また、神経芽腫などの一部の固形腫瘍の治療では、通常のがん化学療法で用いられる数倍の大量の抗がん剤によって、患者さんの体内にあるがん細胞を壊滅させます(大量化学療法)。自家造血細胞移植と組み合わせることで、大量化学療法によって強く抑制された骨髄の造血機能を速やかに回復させます。

②良性疾患:再生不良性貧血などの造血不全、先天性免疫異常症、先天性代謝異常など

ドナー由来の細胞に期待される役割は、造血不全であればしっかりとした造血、先天性免疫異常症であれば新たな免疫システムの構築、先天性代謝異常であれば代謝に必要な酵素などを自ら作り出せるようになること、と様々です。いずれも共通しているのは、患者さん由来の造血細胞の替わりにドナー由来の造血細胞が新たな役割を果たすということです。

がん細胞の根絶を目的とするわけではありませんので、悪性腫瘍に対する移植に比べ、前処置の強度は軽減できることが多いですが、前処置が不十分であればせっかく移植した細胞が患者さんの骨髄に生着できません(拒絶)。また、疾患によっては前処置の毒性が強く出てしまうなど、避けるべき前処置があります。

このように、悪性・良性疾患ともに疾患・症例毎ごとに適切な前処置を選択する必要があります。このため、当院では移植カンファレンスを定期的に行い、患者さん・ご家族ともよく話し合って治療方針を決定しています。

どのようなドナーから移植を行うの?

疾患・病期・これまでの治療歴や患者様の状態に合わせて、どのようなドナーから造血細胞を移植するのかを決定します。

ドナーの候補・選択肢としては、血縁(血のつながったごきょうだいや両親)もしくは非血縁(バンクドナー)が挙げられます。また、同じドナーであっても骨髄・末梢血幹細胞・さい帯血を選ぶことになります(さい帯血は原則バンクのみ)。

どのドナーさんから、どのような方法で造血細胞をいただくのかは、それぞれにメリット・デメリットがあります。患者さんのHLAといわれる遺伝子の型もふまえて最適と考えられるドナーを、ご本人・ご家族とも相談した上で決定していきます。

なお当科では、HLAが半分のみ一致した血縁間骨髄移植(HLA半合致移植)を積極的に行っています。最近では移植後シクロホスファミド(PTCY)を用いた移植片対宿主病(GVHD)予防を導入して、より安全にHLA半合致移植ができるようになりました。

造血細胞移植の合併症は?

前処置によるもの

前処置に用いる化学療法(抗がん剤)・放射線治療による毒性です。骨髄抑制は必発で、白血球数が少ない間は特に感染にかかりやすくなったり、貧血・血小板減少のため輸血は何度も必要になります。また、口や胃腸の粘膜障害による口内炎・下痢は頻度が多いです。

生着不全・拒絶

移植したドナー由来の細胞が、患者さんの骨髄に生着しない状態です。移植の10%程度で起こりうるので、移植後にドナー由来の細胞が順調に増えてくるか、慎重なフォローが必要です。

移植片対宿主病(GVHD)

移植したドナーの細胞が、患者さんの細胞・臓器を「異物」と認識し、攻撃してしまう状態です。症状は、皮疹・肝障害・消化器症状など様々ですが、予防法・治療法とも進歩してきており、以前と比べるとコントロールは良好になってきています。

感染症

無事に生着した後も、特にウイルスの再活性化に注意が必要です。もともと感染して体内に潜伏していたウイルスが、移植後に再び活性化してくることがあります。予防薬の投与やウイルス量のモニタリングなどの対策を行います。

晩期合併症

上に述べた代表的なもの以外にも様々な合併症がありますが、無事にこれらの急性期の合併症を乗り越えて退院した後も、晩期合併症についてフォローが必要です。

具体的には、低身長・性腺機能障害といった内分泌学的な合併症、心臓・肺・肝臓・腎臓などの臓器障害、二次がんなど多岐にわたる合併症の可能性があり、特に成長途上にある小児期ではこれらのフォローが重要となってきます。

当院では長期フォローアップ外来を設置し、これらの合併症の検索や対応を行っております。